雛人形の種類と名前|作り・飾り方・15体の役割がわかる基礎知識
「七段飾りと三段飾りは、どう違うのだろう」「親王飾りって何のこと」「木目込人形は聞いたことがあるけれど、普通の雛人形と何が違うの」——初めて雛人形を選ぶとき、こうした疑問にぶつかる方は少なくありません。
とくに現代は、マンションやアパートにお住まいの方も多く、限られたスペースにどんな雛人形を選べばよいか迷われがちです。飾る手間や、一年の大半をしまっておく収納場所も気になるところでしょう。
この記事では、雛人形の作りと飾り方の種類、七段飾りを構成する15体それぞれの名前と役割、屏風や雪洞(ぼんぼり)といった道具に込められた意味まで、雛人形選びに必要な基礎知識をまとめてご紹介します。名前と役割がわかると、飾るたびに見える景色が変わってきます。
雛人形の作りには、どんな種類がありますか?
雛人形の作りは、大きく「衣裳着人形」と「木目込人形」の2種類です。衣裳着は着物を着せ付けた豪華な作り、木目込は胴体の溝に布を埋め込んだコンパクトな作り。どちらを選ぶかで、雰囲気も大きさも、扱いやすさも変わります。
【衣裳着人形(いしょうぎにんぎょう)とは】
木材やワラを組み合わせた胴体に、実際に衣裳を着せ付けて仕立てる、最も一般的な雛人形です。布地の立体感と重厚な質感が魅力で、格式のある佇まいになります。
衣裳には正絹や金襴といった素材が使われることが多く、十二単のように色を重ねた美しさが際立ちます。袖の広がりがあるぶん飾り幅は大きめですが、そのぶん一体としての存在感があります。
【木目込人形(きめこみにんぎょう)とは】
桐塑(とうそ)で作った胴体に溝を彫り、その溝へ布地の端を押し込んで仕立てる人形です。「木目込み」という名前は、この「木目込む(押し込む)」という手仕事そのものに由来しています。
丸みを帯びた小ぶりなフォルムと、やわらかな表情が特徴です。布が胴体に固定されているため型崩れしにくく、扱いやすいのも利点。マンションのリビングや玄関の飾り棚にも無理なく飾れるサイズ感で、現代のインテリアになじむシンプルなデザインも増えています。
どちらが優れているというものではなく、飾る場所とお好みで選んでいただくものです。選び方の具体的な手順は「雛人形の選び方」でくわしくご紹介しています。
雛人形を選ぶとき、みなさんは何を重視していますか?
最も重視されているのは「デザイン」で33.8%、次いで「サイズ」が21.8%でした。つまり3人に1人がデザインを、5人に1人がサイズを決め手にしていることになります。
これは、浅草橋人形工房すずなりが株式会社NEXERと共同で実施したアンケート調査の結果です。「ひな人形を購入したことがある」と回答した全国の男女142名を対象に、2025年12月に行いました。
デザインを選んだ方からは「自分の家に合うデザインのものを飾りたいから」「好みの顔立ちが良かったから」といった声が寄せられました。一方でサイズを選んだ方からは「飾るスペースが少ないから」「集合住宅のためスペースに限りがあるから」という、住まいの事情に根ざした理由が目立ちます。
見た目の美しさと、暮らしへのなじみやすさ。この両立が、現代の雛人形選びのポイントといえます。
出典:株式会社NEXERと浅草橋人形工房すずなりによる調査
ひな人形どう選ぶ?3人に1人が「デザイン重視」一方で5人に1人が「サイズ」を重視した!(PR TIMES)
雛人形の飾り方には、どんな種類がありますか?
飾り方は主に「段飾り」「親王飾り」「収納飾り」「ケース飾り」の4種類です。人形の数と台のかたちで分かれており、必要なスペースも収納のしかたも変わります。現代の住まいでは、コンパクトに飾れるタイプが選ばれています。
その前に、ひとつだけ言葉の説明を。「親王(しんのう)」とは、男びなと女びなの二体を指す呼び名です。雛飾りの主役にあたるお二人で、天皇と皇后をモデルにしています。この二体だけを飾るから「親王飾り」、と覚えていただくと、このあとの説明がわかりやすくなります。
【段飾り(七段飾り・三段飾りなど)】
複数段の台に人形を配置する、伝統的な飾り方です。
最も豪華な七段飾りは15体がすべて揃い、大きなもので幅135cm前後・奥行き170cm前後のスペースが必要になります。親王から五人囃子、随身、仕丁まで、宮中の婚礼の様子をそのまま再現した格式のある飾りです。
三段飾りは親王と三人官女までを飾るタイプで、幅60〜80cm程度。リビングのサイドボードにも置ける大きさです。「段飾りの華やかさは楽しみたいけれど、七段は場所を取る」という方に選ばれています。
【親王飾り】
男びなと女びなの二人だけで構成される、最もシンプルな飾り方です。幅50〜75cm程度のものが多く、マンションやアパートにお住まいの方に最も人気があります。リビングボードやチェストの上、玄関の飾り棚など、置き場所を選びません。
立ち姿の「立びな」であれば幅30〜40cm程度とさらに省スペース。飾る場所が限られていても、しっかりお飾りいただけます。
【収納飾り】
飾り台がそのまま収納箱になるタイプです。屏風や雪洞、三宝といったお道具類を台の中にまとめてしまえるため、オフシーズンに箱がいくつも散らばりません。収納スペースに限りのあるお住まいで重宝します。
なお、お人形そのものは、購入時の元箱に入れて別に保管されることをおすすめしています。お顔や衣裳はデリケートですので、余裕のある元箱で休ませてあげるほうが、長く美しい状態を保てます。「台にすべて詰め込む」のではなく「道具は台へ、人形は元箱へ」と覚えていただくとよいでしょう。
【ケース飾り】
人形と道具をガラスやアクリルのケースに納めた飾り方です。ほこりの心配がなく、出し入れも一度で済みます。小さなお子さまやペットのいるご家庭でも安心して飾れる点が支持されています。
選ぶ際に一点だけ知っておいていただきたいのは、人形や御道具がケースに固定されているタイプは、後から組み合わせを変えたり、一体ずつ手入れをしたりすることができないということです。手軽さと引き換えに、飾り方の自由度や、一体ごとの仕立てを楽しむ余地は少なくなります。何を大切にしたいかで選び分けていただくのがよいと思います。
段飾りの人形には、どんな名前と役割がありますか?
七段飾りには、一段目の親王から五段目の仕丁まで、それぞれ役割を持った15体が並びます。雛人形は宮中の婚礼を表現したもので、一体ずつに担う役目があります。
【一段目:親王(しんのう)】
最上段に飾られる男びなと女びなは「親王」と呼ばれ、天皇と皇后をモデルにした主役です。男びなは「笏(しゃく)」という細長い板を、女びなは「桧扇(ひおうぎ)」という扇を手にしています。
笏は儀式で用いる道具で、式次第を記したメモの役目も果たしました。桧扇は高貴な女性が持つ扇で、顔を隠す役割もありました。どちらも宮中の正装に欠かせないものです。
配置は地域によって異なります。関東では男びなを向かって左、女びなを右に。関西ではその逆になります。これは「左上位」という古来の考え方によるもので、京都御所では向かって右側(天皇から見て左側)が上位とされていました。どちらが正しいということはなく、ご家庭に伝わる飾り方を大切になさってください。
【二段目:三人官女(さんにんかんじょ)】
天皇皇后のお世話をする女官たちです。向かって左が「加えの銚子(くわえのちょうし)」、真ん中が「三方(さんぽう)」、向かって右が「長柄銚子(ながえのちょうし)」を手にしています。いずれも婚礼の儀式でお神酒を注ぐための道具です。
真ん中の官女だけが既婚者(または年長者)で、眉がなく歯を黒く染める「お歯黒」の化粧をしています。お歯黒は既婚女性の証で、平安から江戸まで続いた習わしでした。
【三段目:五人囃子(ごにんばやし)】
能楽を奏でる、元服前の少年たちです。向かって左から「太鼓(たいこ)」「大鼓(おおつづみ)」「小鼓(こつづみ)」「笛(ふえ)」「謡(うたい)」の順に並びます。謡は歌い手なので、楽器を持たず扇を手にしています。音の大きい楽器ほど左に置く、というしきたりです。
婚礼の場を盛り上げる、いわば祝宴の演奏隊。にぎやかな音が聞こえてきそうな段です。
【四段目:随身(ずいしん)/左右大臣(さゆうだいじん)】
天皇皇后を護衛する「随身」です。別名を「左大臣」「右大臣」といい、宮廷の警護役にあたります。向かって右が年配の左大臣、向かって左が若い右大臣で、いずれも弓矢を携えています。名前は親王から見た位置に由来します。
年配の左大臣のほうが位が高く、若い右大臣は実際の警護を担う役どころでした。
【五段目:仕丁(しちょう)】
御所の雑用を務める庶民出身の三人組です。「笑い顔」「泣き顔」「怒り顔」と表情が異なり、「表情豊かに育ちますように」という願いが込められています。この三つの表情は「三人上戸(さんにんじょうご)」とも呼ばれます。
持ち物は地域で異なり、関東では「立傘(たてがさ)」「沓台(くつだい)」「台笠(だいがさ)」といった外出時の道具、関西では箒や塵取といった清掃の道具を手にします。
雛人形の道具には、どんな意味が込められていますか?
緋毛氈は魔除け、金屏風は輝かしい未来、雪洞は人生を照らす明かり——飾りに添えられる道具は、そのすべてが子どもの幸せを願う意味を持っています。単なる装飾ではありません。
【緋毛氈(ひもうせん)】
雛人形の下に敷く赤い敷物には、魔除けの意味があります。赤は古来より邪気を払う色とされ、子どもを災いから守るという願いが込められています。太陽や生命力を象徴する色でもあります。
【親王台(しんのうだい)】
親王が座る台には「繧繝模様(うんげんもよう)」があしらわれています。色の濃淡を段階的に重ねた伝統文様で、最も格式の高い敷物にのみ用いられてきたものです。
【屏風(びょうぶ)・雪洞(ぼんぼり)】
金屏風には「二人の未来が光り輝くように」という願いが込められています。金は古来より最も尊い色とされ、豊かさと繁栄の象徴です。
雪洞は、かつて照明として使われていた燭台です。現代の雛人形では電池式のLEDが組み込まれたものも多く、実際に灯りをともせます。この明かりには「子どもの人生を明るく照らす」という意味があります。
【右近の橘(うこんのたちばな)・左近の桜(さこんのさくら)】
親王の左右に飾る植物は、京都御所の紫宸殿(ししんでん)に由来します。実際の御所の南庭には「左近の桜」と「右近の橘」が植えられており、それを雛飾りに写したものです。
桜には邪気を払う力があるとされ、春の訪れと新しい命の象徴。橘は常緑樹であることから「永遠の命」を表し、不老長寿を願う意味が込められています。
【お嫁入り道具・お輿入れ道具】
箪笥、長持、鏡台、針箱、火鉢、茶道具といったお嫁入り道具には「嫁ぎ先で不自由なく暮らせるように」という願いが込められています。
お輿入れ道具は、御駕籠や御所車など、婚礼の際に乗る乗り物を模したものです。高貴な身分の女性の婚礼行列を、そのまま小さく写しています。
【お供え物の道具(三方・高坏・菱台)】
「三方(さんぽう)」「高坏(たかつき)」「菱台(ひしだい)」など、お供え物を載せる道具も並びます。菱餅の三色にはそれぞれ意味があり、白は雪の大地で「清浄」、緑はよもぎで「健康」、桃色は桃の花で「魔除け」を表しています。
名前を知ると、雛人形選びはどう変わりますか?
「なんとなく可愛い」で選んでいたものが、「この作りだから、この表情になる」と腑に落ちるようになります。衣裳着と木目込という作りの違い、親王飾り・段飾り・収納飾りという飾り方の選択肢。この二つを知っているだけで、住まいと暮らしに合った一飾りにたどり着きやすくなります。
すずなりでは、木目込人形と衣裳着人形の両方をご用意しています。飾り幅はおよそ45cmを基準にした、現代のお住まいに合うサイズ。お人形に、屏風・飾り台・御道具を自由に組み合わせて、ご家庭だけの一飾りをお作りいただけます。
お子さまのすこやかな成長と幸せを願って、暮らしのなかにそっとお飾りください。
よくあるご質問
衣裳着人形と木目込人形、どちらを選べばよいですか?
飾る場所の広さとお好みで選んでいただくものです。重ねた衣裳の豪華さや存在感を楽しみたい方は衣裳着人形、限られたスペースに飾りたい方や、丸みのあるやわらかな佇まいがお好きな方は木目込人形が向いています。木目込人形は布が胴体に固定されているため型崩れしにくく、扱いやすいのも特徴です。
親王飾りと段飾りは何が違いますか?
飾る人形の数と、必要なスペースが違います。親王飾りは男びなと女びなの二人だけで、幅50〜75cm程度。段飾りは複数段の台に人形を配置するもので、三人官女までの三段飾りで幅60〜80cm程度、15体すべてが揃う七段飾りでは幅135cm前後・奥行き170cm前後のスペースが必要になります。
収納飾りには、お人形も一緒にしまえますか?
収納飾台にしまえるのは、屏風・雪洞・三宝といったお道具類です。お人形そのものは、購入時の元箱に入れて別に保管されることをおすすめしています。お顔や衣裳はデリケートですので、余裕のある箱で休ませるほうが、長く美しい状態を保てます。
男びなは向かって左と右、どちらに飾るのが正しいですか?
どちらも正しい飾り方です。関東では男びなを向かって左、女びなを右に置きます。関西ではその逆で、男びなが向かって右になります。これは「左上位」という古来の考え方の違いによるもので、京都御所では向かって右側が上位とされていました。ご家庭に伝わる飾り方を大切になさってください。
五人囃子は何をしている人形ですか?
婚礼の場で能楽を奏でる、元服前の少年たちです。向かって左から太鼓・大鼓・小鼓・笛・謡の順に並び、音の大きい楽器ほど左に配置するしきたりがあります。謡は歌い手のため楽器を持たず、扇を手にしています。
マンションに飾るなら、どのくらいのサイズが目安ですか?
飾り幅45cm前後が、現代の住宅環境に合う目安です。この幅であれば、リビングボードやチェストの上、玄関の飾り棚などに無理なく飾れます。大きすぎて置き場所に困った、小さすぎて物足りなかった、というお声をもとに、すずなりが基準としているサイズです。
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